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執筆者の写真HEAVENESE

エリトリア遠征③その洗濯物どうする❓

エリトリアで迎えた最初の朝、日曜日。

明け方、遠くで教会の鐘がなる。

同時にコーランの祈りが響く。

鐘の音と祈りの声に目を覚まさせられるのはなんともいいものだ。

快晴だ。人通りも車の通りも少ない。


アスマラの日の出

午前10時から、地元の伝統楽器ミュージシャンとの交流会がセットアップされている。

こちらで活動は基本的に可能な限りHEAVENESEのオフィシャル衣装とメークでこなすことになった。

ニューヨークでも、その他、どの国でもそうだったが、衣装を着てメンバーで歩いているだけで目立つから、コンサートのフライヤーを配ったり、人々と話す機会が増える。

我々のことを全く知らないエリトリア人が、果たしてコンサートに来てくれるのかもわからないし、こちらでどんな告知がなされているかも不明だったので、とにもかくにも人々と接し、話す機会を多く作り出すことを念頭に衣装での行動を決めた。


メークルームは19。

ここが少し広いのでここにメークのために皆がが集まってくる。


コーディネーター夏子とメークシマの部屋だが、ここをメンバー用ヘアメイクルームとして使用する。

日本から持ってきたお菓子や、インスタントの味噌汁など、ちょっとしたつまむものも常備した。


HEAVENESEアシスタントの西岡は、日本から炊飯器を持ってきている。

メンバーのために毎日米を炊き『おむすび』をつくるためだ。

「明日から毎朝つくって、ルーム19においておきますね」と張り切っている。

本当にありがたい。

二日目からは毎朝5時に起きてみなのために「おむすび」を用意してくれた。



ただの旅行なら、地元で食べたいものを食べ、グルメを満喫するのも旅の醍醐味だろう。

しかし我々にはミッションがある。

大切な「本番」を無事に終えるまで体調をいかに管理するかが重要だ。

なんでもかんでも慣れないものを食べてお腹を壊してもいけない。

食べたいからと言ってただ食べるのではなく、なるべく日常を再現して体調をコントロールする。


ルーム19は北向きの部屋なので暗めだが、カーテンをあけて外を見ながらメークをする。

その日の出発時間に合わせて、ヘアメークの佐野とシマがそれぞれのヘアメイク時間割を決める。

マレがルーム19でヘアメイクをしていたときだ。

ホテル裏手にある大きな建物の中庭で、メイドらしき女性が洗濯ものを干しているのが見えた。

トルコ領事館らしい。


中庭に干されている洗濯物

ピンクが鮮やか 明るいメイドさんたち

我々のホテルの清掃スタッフと同じようなピンクのユニフォームをきている。

ブラックの人たちはアメリカでもそうだが、とにかく着るものが色鮮やかで、それがとても映える。

日本では歳をとった女性はだいたいべいじゅやブラウン系の色に収まってしまう。

ところが、とにかくアフリカ系の人は色鮮やかな衣装で自分たちを飾る。

それが褐色の肌とのコントラストで美しい。

その女性は我々に見られているとは知らず、もくもくと日常の仕事をしていた。


北側の窓の向こうにトルコ領事館が見える

視界から見えなくなると、きっとそっちに洗濯機があるのだろうが、そこから大量のシーツをもってきて、ものほしロープに投げつけた。大きなシーツと真っ白なタオルだったが、もののに見事にタオルが地面に落ちた。

下は泥だ。


彼女は素知らぬ顔をして、ものほし作業を進めている。

シーツを伸ばして綺麗にほす。

あの落ちたやつはどうするのだろう?

まさか、落ちたものをそのままほすんじゃないだろうな。

マレたち数名は、その女性の行動に注目していた。


日本のように靴を脱いで家に上がるという国ではないと、それがアメリカであっても、どこであっても、地面に座ったり、靴のままソファの上に足をあげたりするのは平気だから、地面に落ちた洗濯ものも特に気にならないのかと思いながら眺めていた。

すると彼女は、ついに落ちたタオルを拾い上げた。

そしてタオルを広げると状態を確認している。

さあ、どうする。

ホテルの部屋で様子を伺っていたマレたちが勝手に息を飲んでいると、彼女はタオルをそのまま物干しにはかけずに、それを持って視界から消えていった。

それを見ていた部屋の中に拍手が起こった。


「ああ、よかった」

「ちゃんと仕事してるよ!彼女は誠実に」


彼女は見えないところで忠実に心を込めて正しい仕事をした。

まさか見られているとは知らずに。


彼女の洗濯ものの扱いによっては、我々のエリトリアに対する印象は変わっていただろう。

きっと、決して裕福ではないであろうメイドが、主人に見えないところでなした小さな日常の行いがエリトリアという国の労働者の実情を反映しているように思えた。

「ほっとする」誠実さがそこにはあった。


マレが言った。

「我々も、いつでも神に見られていることを意識しなくてはいけないね」


あっぱれだ。

エリトリアのメイドたち!





続く

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